メモ帳

恋の何歩か手前

ちょうど、紅の豚の終盤のシーンで決闘をした2人のような

明日(と言っても日付が変わって正確には今日だが)、妻が出産のために入院する。予定日を過ぎても陣痛や破水が起こらないので、入院して処置をするのだ。

少し心配だけど、ここに至るまでにたくさんの困難を乗り越えてきたので、私の妻なら大丈夫だと信じている。

出産の時、本当は側にいたいのだけど、今は面会すらも禁じられているのでそれは叶わないようだ。仕方ないと思うしかない。

実家の母が「妻の実家に持って行け」と、おでんを大量に作って持たせてくれた。

大きな鍋ごと渡されて、とても重いけど、なんとか妻の実家に届けて、夕飯は妻の家族とみんなで食べた。

母は私を産む前日におでんを食べたらしく、それを思い出して作ったらしい。

そのことを妻に話したら、「だからあなたはおでんが好きなのかもね」と言われて、そうか、私はそういえばおでんが好きだったな、と他人事のように思い出した。

もしかしたら我が子もおでん好きとして生まれてくるのかもしれない。

妻が「そうしたら、おでんを作れば2人が喜ぶね」と言っていて、想像したら、それはなんだかとても楽しそうだな、と思った。

母子ともに、無事に出産を終えることを祈りながら、私は私のいつもの日々を、心の中でだけ少し特別に思って送るしかない。それが私のできることの精一杯なのだと思う。

本当に、出産というイベントにおいて父親は無力だな、と思う。

 

それでなくても私は弱い。気がとても弱くて、根性もない。力も強くないし、痩せていて、どこか頼りない風貌だと自分でも思う。

そんな私が本当に父親になれるのだろうか。

父親というと、もっとなんていうか、がっしりした体つきで、腕っぷしが強くて、根性があって、頼りがいのある風貌を思い浮かべる。

ちょうど、紅の豚の終盤のシーンで決闘をした2人のような。なぜかあのシーンが思い浮かぶ。

私は、これから父親になるということが少し不思議で、そして、少しだけ不安で、でも、楽しみな気持ちもやっぱりたくさんある。

そういうことに、ここまで来て、最近やっと気付けた気がする。

もしかしたら、私は、私の想像するような頼りがいのある父親にはなれないかもしれないけど、私なりの父親になれたら、と思うことにして、明日も仕事なのでそろそろ寝ます。