メモ帳

恋の何歩か手前

小さなサバイバルナイフによって切り開かれてしまった

一応、雨合羽を着てレインブーツを履いて家を出たけれど、結局、会社に着くまでに雨は降らなかった。

降らない方が良いのだけど、降らなきゃ降らないで少し寂しくなるのは自分でも勝手だな、と思う。

 

 

昨夜、妻と話し合って決めたこと。子供の名前の他にもうひとつ。育児休暇を取得するかどうか。

今日、上司に取得しようと思っている旨を告げた。

会社の雰囲気から確実に反対されると思っていたのだけど、特に何のゴタゴタもなく話は終わった。スムーズにことが運ぶ方が良いに決まっているのに、どこか拍子抜けしてしまったのはイメトレにイメトレを重ねた理論武装のせいかもしれない。

でも、これで、家族と暮らす時間をわずかながら確保することができた。一生で見れば一瞬かもしれないけれど、一度しか味わえないのだから、今から待ち遠しい。

 

 

最近は、重松清著のいじめをテーマにした短編小説集『ナイフ』を少しずつ読んでいる。

『ナイフ』に集録されているナイフという話を読んでいたら、月並みな表現だけど、堰を切ったように涙が溢れてきて自分でも驚いてしまった。

ここ数週間のうちに私の何処かで塞き止められていた疲れとか寂しさとかモヤモヤみたいなものが、作中に登場する小さなサバイバルナイフによって切り開かれてしまったのかもしれない。物語の中にいる父や息子、そして母と一緒に泣いてしまった。

これから父になる私も、傷つけるためのものではなく大切なものを守るためのナイフを左胸に忍ばせていたい。

 

 

結局、帰りも雨は降らなかった。